株式会社ESF

2019.06.14

ギリシャ・ヒオス島、神秘の樹脂「マスティハ」


古代ギリシャ時代からその薬効が珍重されてきたマスティハ。
ヒオス島にしか生息しないマスティハの木から出る樹脂が今改めて世界の注目。

現地取材:根本千代子

経済不況のイメージが強いギリシャであるが、唯一不況の影響を受けない元気のいい島がある。ギリシャの東の国境沿いに位置する島、ヒオス島である。

隣国トルコまでは、美しいエーゲ海を隔てることわずかに7㎞。港からはトルコ側の建物を眺められるほどの近さだ。他のエーゲ海の島々同様、観光にも推したい島であるが、取材した島の方々は口を揃える。

「ヒオス島にはマスティハがあるから、観光に頼らなくていいんです」 そう、マスティハというのが、ヒオス島の宝、今回紹介したい素材である。

メスタ村。現在、ヒオス島南部の24の村でマスティハが生産されている。古代からマスティハは外敵の危険にさらされてきたため、村は城砦に囲まれ、内部の道は細く迷路のよう

外敵が来たら屋根伝いに逃げられるように、村内の家どうしはくっつきあっている

ヒポクラテスも称賛した薬効

マスティハは、ウルシ科の樹木「ピスタチア・レンティスカス」から採取される樹脂である。木自体は地中海全域に自生しているが、不思議なことに樹脂が採取できるのはヒオス島の、しかも南部に生息する木だけという。ヒオス島の特殊な「微気候」、数世紀に渡る体系的な「優性保護」、さらには栽培を体系化し、製品を規格化、製品価値を生み出し、市場を確立した古代ヒオス人の優れた管理能力がその理由とされているが、その神秘性はまだ完全には解明されていない。

古代から薬効が広く知られており、紀元前5世紀にヒポクラテスが消化と口臭に対する薬効性を説いたものが、確認されている最古の記録となっている。 現在では、古代からの言い伝えを科学的に証明する研究が進み、胃の疾患、特にピロリ菌への有効性が多く発表されている。また、古代より口腔衛生に優れていることで知られており、口臭予防や歯周病に優れた効果を持つ。

1997年、PDOに登録

樹脂の採取は、7月から9月に行われる。木の幹や枝に特殊な器具で切れ込みを入れると、透明で涙のような形に樹液がにじみ出る。樹液は、きれいに掃除され、白いアスプロホマと呼ばれるカルシウムを含んだ粉末状の陶土をまいた上に落ち、そこで自然に乾燥させた後に集められる。

集められたマスティハの結晶は、まず生産者の手で仕分けされ、その後ヒオス・マスティハ生産業者組合に持ち込まれ、さらに機械や人間の手で汚れの除去などの洗浄を重ね、加工へと流れる。

ヒオス・マスティハ生産業者組合では、きれいに洗浄されたマスティハを結晶、パウダー、カプセル、オイル、チューインガムなどに加工して販売している。結晶、オイル、チューインガムは、1997年にPDOに登録され、マスティハは、今年2月に日本とEUでスタートした地理的表示(GI)によって保護されている。

マスティハの結晶。木の根元の方が大きな結晶となるが、サイズによる品質や効能の差はない

木に切り込みを入れると、透明の樹脂がにじみ出てくる
乾燥させて集めた樹脂を村の女性たちが、より分ける。古代から変わらない風景

機能性が認められ、80カ国に輸出

マスティハの結晶は、薄いレモンイエローをしており、独特の甘い香りがする。見た目は氷砂糖に似ているが、味はうっすらと苦みがあり、噛むとまさしくガム。

原料として使用する場合は、この結晶をつぶして粒子にして使用する。現在は、調理用にパウダーも商品化し、結晶とともに各国に輸出している。現在、その輸出先は80カ国に及ぶ。

ヒオス・マスティハ生産業者組合は、マスティハを機能性食品として日本市場に紹介したい考えだ。

現在マスティハは、パン、チョコレートなどの菓子類、アルコール飲料などに多く使われている。

ヒオス島で訪れたレストランでは、あらゆる料理にマスティハが使われていたが、料理には調味料としてパウダーを、香りづけにオイルを使う方法が多い。バーでは、マスティハの香りを楽しめるよう、赤ワインやカクテルにオイルが使われていた。

マスティハは、アロマによる癒しの効果以外に、消化器官への効能が多数報告されている。当然ながら、食べ過ぎ、飲み過ぎによる胃腸の不調も改善してくれる。 ギリシャで食事をすると、日本人の胃では太刀打ちできないほどの量が供される。それでも今回しっかり食事ができたのは、マスティハのおかげだろう。

調理に使うのは、マスティハの結晶、パウダー、オイル
ヒオス島の伝統料理で有名なレストラン、ホッジャス。コロッケや、野菜の煮込み、鶏のグリル、デザートにもマスティハが使われている

ヒオス島産マスティハの治療効果と有益性

ヒオス島産マスティハに認められている効果
・抗菌/抗微生物作用
・抗炎症作用
・抗酸化作用

人の身体に及ぼすプラスの効果
・胃腸系の衛生状態
・消化器系の不調(潰瘍や消化不良)の予防および治療
・脂質およびブドウ糖の代謝におけるプラスの効果
・複数種の腫瘍に対する抗ガン作用
・口腔衛生全般(プラーク形成の減少、口腔内のバクテリア細菌増殖の抑制、歯茎の強化)
・創傷の治療や皮膚の再生(傷や火傷の治療

※ギリシャ古来のスーパーフード「ヒオス島産マスティハ」
-多岐にわたる治療的側面と料理への応用- イベント資料より抜粋